カンッ

…攻撃の一つ一つが重い
一つ一つがサリルの記憶で
すべてがサリルの伝えたい事なのだろう
受けるたびにサリルの見た事が頭の中に映る
その先を見たくて
なぜこんなことをするのだろうとか、生きていて欲しいとかそういうのはもうどうでもよくなっている…
…浴びる返り血は気にしない
そんな自分に強い疑問を持つ

カンッ

悲しくて悲しくて仕方がない
これが終われば私の生は終わる
正確ではないかもしれないが
これが終わったあとの皆の反応が目に浮かぶ
だけどこの瞬間が楽しくて楽しくて仕方がない
最後だからこそ、この楽しさを生きるすべてを伝えたい
流れる血は決して無駄ではない

カンッ

何を馬鹿なことを
こんなことしたって何もなりはしないのに
結局悲しい人が増えるばかりで
どうにもなりはしないじゃない
所詮これは2人の自己満足
なんでこんなことを選ぶの?


カンッ

いつの間にかお互いの戦う制御がなくなっている
殴る、蹴る、斬りつける
魔術を放つ、よける
私たちは心も体も消耗しきって
抑えるべきものを抑えきれない
隠すものなどない…そんな時が訪れはじめていた

キンッ

炎に包まれた手から剣を弾き飛ばす
彼女の攻撃センスは見事だけど…私のほうが分がいいらしい
「………大丈夫ですか?もう体が悲鳴あげてるように見えますが…」
「情けは無用だ」
「……っ…だって!…もうっ…」
…貴方の血は武器どころではない
「ははは、こんなの熱くないよ、だって自分の炎だもの、怖くないよ」
もしかして貴方はそうなることを恐れていたのですか?
「…何故そんなになってまで……!」
そんな姿を見せない事を第一に考えていたんですか?
「ま、今はやる時だからねぇ…どんなになってもやるしかないだろう?」
……私の目の前にいるのは
炎の塊………の
「サリルさんっ!」
……なんで…こんなになって……まで…
「これはいつかなるはずだった姿だ」
そんなことはない、それ以上に人を外れても、手段を探せば、一つくらいは
「自然に任せてたら理性も飛んでただろうし……今ももうすぐ理性が飛ぶ気がする」
うそだ、いやだ
……違う、わかってた気がする、そうじゃなければなんで承諾した?
「……私という存在を誰かに背負って欲しいのと…もう一つ理由があった」 この人はやさしい残酷さを持ってるから
「誰もこの姿や死ぬ姿を知らなければ信じていられるだろう…?」
…信じてさえいれば、アナタはその人の心の中で生きていられると
そう思っているのですか?
「アナタの家族…パールちゃんや!ホワイトさんは…!?」
「はは……2人には…これもある意味酷かもしれないが…そんなうそつきたくない」
……。
私は、そんな正直さを持っているだろうか
「まぁ、そんな中途半端なことをしているから…きっと私が死んだって言うことはすぐ気づかれる…だろ」
私は、そんなやさしさを持ってるだろうか
「それでも、最後の望みを」
……それでも彼女を殺さない感情は残ってるだろうか
ただ、悲しくて、悲しくて
辛くて、辛くて
「…そして私の最後までのわがままだ」
最後の会話をやめたくなくて
「最後まで友人達と私が死ぬ事を前提とした会話はしたくなかったから」
この会話が終わればきっと………
「もし、これがだ…唐突に3日前に知ったとしても同じ行動をしたと思う」
いやだ、離したくない、あっちへいってほしくない
出来るならば、共にあっちへいったってかまわない
そんな思いが起こる
「死を感じない、忘れてしまうような日常って幸せだよね」
胸が…苦しい
彼女を殺してしまう自分に疑問を感じる…
だめだよ、それじゃ……私までそっちに引きずられてしまう

「ダメですよ、サリルさん……それなら、そこで死んでしまったら」
苦しそうな顔で聞いていたクラウドがようやく口を開く
でも、ヤツの言葉を聞いても私は変わらない
「皆が悲しむのも…知っててやるのですか…?」
「あぁ」
いつの間にか、クラウドの腕がモンスターのような…爪をしている
心なしか色も変化しているように見える
「……何故……?」
あぁ、私はこいつも苦しめていくのだね
こいつも私と一緒なのか
「なんでっ!?」
いや、私以上か…? クラウドは心が壊れてしまえば…姿をとどめていられないのか
「……いつかは起きる……事だから」
「だからって今じゃなくたっていい!時間をかければいつかは!きっと元気になれる!」
「でも、これが…サリル=エルディアの寿命だと思うのだよ、それ以上曲げたく…ないんだ…」
自分でも、矛盾してる言葉だ
ここまでクラウドをボロボロにして
これから皆を悲しませて
それをしたくないといいつつ、それを決行する私
なんと愚かで、なんとばかげた
滑稽な動きだ
結局…私のわがままがすべての原因か…
周りに黒い点が見える
「サリルさんっ!?」
痛みと共に目の前にいる少女が飛び込んでくるのが見える

うっかりしていた、感情を開放しすぎた、悲しみを感じすぎた、抑えきれなかった
私は精神体しかも特殊なタイプ、故に強い感情を抱けば…それは兵器になる
目の前に広がる黒い矢
悲しみ過ぎて、サリルと共にいこうという感情を持ってしまったせいだろう
その矢はまっすぐに

……痛い。矢は貫通し私を貫いてる
私を支えているコイツも貫かれてるようだが…コイツは死なない
この痛みは、コイツと…皆が受ける分だろう
「癒しはするなよ…」
……それならそれでもういい
この痛みを抱きしめて眠るまで
「…………ごめんな」
痛みに顔をしかめて目の前の頭に手を置く
ごめん、ごめん、
ごめんなさい。
…ごめん、皆
でも
…私が……


…最後の言葉がそんなんじゃなくていいのに
せめて痛みを感じないように一思いにできればよかった
「………。」
それができなかったのは私の弱さか
もう死なないって決めていた
でも、もう一度誓おう
何があっても死なない
更にもう一つ
これからサリルの友人達に会おう
そして気づいた人に私が感じた、信じた事実を
……私はサリルのすべてを背負おう
憎しみや悲しみも
それを背負うのが…私の立場なのだろう
何があってもつぶされるものか
どんなに重くても背負うから
どんな遠回りしても、きっと笑えるようになるから
だから私は
ココでは憎しみを背負う人形であろう
自分を疑う自分と腕を誤魔化し
屍を一つ抱いて
足を進める

でも、これこそが人でしょう?
死に行き
そして屍を抱いて歩いてゆく…道こそが