以前いたPTが全滅したのを聞いた
様子を見に行くとそこの女戦士が怪しげな動きをしていた
怪しいといっても変態じみているとかそういうのじゃないよ
魔方陣を四苦八苦しながら書いてた。召還魔法。凄く複雑なの
面白そうだから邪魔してやって、ワタシが代わりに使い魔になってあげた
それからワタシは…サリル=エルディアを知り続ける事になった
サリルは力はいらないけど、欲しいという
人を超えた力はこれ以上いらないという
これ以上身以上のものを欲して暴走しては何もならない
ただでさえ今の力は暴走しそうで怖いらしい
だけど今近くにいる存在を守れる力は欲しいという
いっしょに仲間達を守ってくれる存在が欲しいという
自分はいつ何が起きるかわからないだからその時に止める存在が欲しいという
そして、自分が別の結論にたどり着いた時に、認めて受けてくれる存在が欲しいという
私への最初の命令は
「私と戦えるか…?」
サリルの使い魔になってかなりの日がたった
死の日まで…あと半年を切ったっけ?
友人と遊んでいない日は人使い荒くワタシをフルに手伝いさせ
資料を集め、目を通し、まとめ、応用を考えていく
一つも、サリルの思いに適う案は見つからないし、思いつかない
禁忌を踏まず、人の寿命を生きるぐらいは限界を伸ばせないだろうか…
人から外れれば外れただけ、傍にいたい人たちからとは遠ざかってしまうから
でも、ワタシはなんとなく気がつき始めていた
サリルの望みどおりの手段なんて見つからない…
存在そのものがもう既に人から外れてるんだから
人の禁忌を踏まないで寿命を延ばそうなんてこと…きっとできない
「ねー。さりるー禁術の整理はしないのー?せっかくあるのにー」
「…する必要ないだろ、流石に使えそうな部分は使うって事はできないのな」
パラパラと本をめくり、反魂の術とか嘘くさい見出しを見つけてみる
「これなんて使えそーじゃなーい?」
……長い沈黙が訪れる
「お前、それがどういうものか知ってるよ…な?」
「うん、パチモンでしょ?」
…聞こえる溜息はもう聞き飽きた
「違う、そういうのを使ったらどうなるか…わかってて言ってるんだよな?」
わかってなかったら何故提案したのだというの
うるさいうるさい
「……サリル、本当はわかってるんじゃないの?人の手段だけを選ぶのは…無理があるってこと
それがわからにくらい頭悪い?それとも本当は死にたかったりしちゃったりする?」
使ったらから何かが起きるなんて別にどうでもいい
「そんなこと…あるわけないだろ」
「じゃあなんでっ!?なんで中途半端なところで諦めるのよっ
何もしなかったらサリルは死んじゃうんでしょう?
だったら世界がどうなってもかまわないじゃない
生きればいい
「…死にたく…なんてない……っ 怖い…嫌だ……」
反論する言葉が一瞬で紡げなくなった
人にはなしたって信じられる事はないであろう、サリルの叫び
「仲間と笑い会って、義理でも家族がいて、娘たちの成長を見る……そんな時がずっと続けばいいのに」
顔は見えない。私が見えるのは力を込め、震える腕
「失う痛みは知っている。だからもう誰も失いたくない…」
普段は笑顔ばかりの顔が、涙でぐしゃぐしゃで
「…だから…失わせる事も…したくないんだ…」
弱音なんて吐き出さない口から、嗚咽と苦しみが吐き出されて
「日付を見るたびに不安になって、怖くて、あとどれだけ笑えるか…て考えて苦しくて」
普段どれだけホンネを押し隠しているのかがよくわかって
「泣き出したくても、泣き出すつもりはなくて、だからまっすぐ進むしかなくてっ」
それなら…とワタシが口を開く前に声が聞こえる
「……死にたくなんかない……生きたい……生きたいよ。……だけど、今以上に人から外れても皆とはいられそうにない……」
……………化け物になってでも生きたいとは…言わないんだ
数日後、私は知り合いを呼ぶ事にした
知り合いというのもよそよそしいか
ワタシの母みたいな人、リュウ=クラウド
リュウは条件さえ揃えば禁忌も普通に踏み倒していける能力を持っている
存在そのものがアレな人
サリルを存在させ続けるなんてお茶の子さいさいなんだ
そして、それをすることに躊躇しない頭の悪さ…も持ってる
今、異大陸にいて、クーパーさんって人ともう20歳過ぎた子供といっしょに旅していたのを
無理を言って頼んだ
ワタシが知る人の中で
サリルを助けられそうな人はいないと思ったから
それなのに
……それなのに……
なんで…こうなっちゃうの…サリル
なんで…認めちゃったの……リュウ
ねぇ、…なんで………?
………なんで………